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「坂道のアポロン」と ビル・エバンス

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先日、久々に少女マンガのコミック本を買った。はて、“少女マンガ”っていうのは呼び方として今も健在なのだろうか。僕の理解は、女性向け漫画雑誌に掲載されたもの、あるいは、女性を主たるターゲットとして描かれたもの、というところだけれど、「少女」というのがちょっとひっかかる。ターゲットは今やもっと広いだろうからね。

うちは奥さんも好んで漫画を読むわけでないし、息子二人のむさくるしい家庭なので、その手の本とは縁遠い。実際、思い当たるところで我が家にある少女コミックは、「のだめカンタービレ」くらいだろう。とはいえ、大きな声では言えないが、僕にもかつて毎月欠かさず少女マンガを読んでいた時期があったのだ。それは僕が中学・高校時代。3つ下の妹が小学校の高学年になった頃から、僕が18歳で家を離れるまでなので、恐らく5年間くらいのことだろう。「なかよし」と「りぼん」だったと思うが、毎月妹が買ってくるなり取り上げて読んでいた。よくは覚えていないが、今でも漫画家としてよく名前を聞く人や今ではコメンテイターになったり文筆家になったような人も当時から活躍していた。そんな中、一番のお気に入りは田淵由美子の作品だったと記憶している。

さて、件(くだん)のコミック本「坂道のアポロン」には、行きつけの梅田マルビル・タワーレコードのジャズコーナーで出合った。ジャズのCDの棚にいっしょに漫画本が並んでいる光景は、ちょっとアンバランスで目を引く。場所はビル・エバンスの棚のすぐ横だ。封印された一冊を手にとって帯を眺めてみるが、ジャズのことなどどこにも書いてない。少女マンガにありがちなストーリーの端緒が書かれているだけだ。小玉ユキ。聞いたことがない。1巻から6巻までが整然と並んでいるが、その横を難しい顔でCDの背を眺めていたおっちゃんが通り過ぎる。

結局その場では買わず、後日、主人公がジャズの世界に入りこんでいくモチーフが描かれているという情報を知ってから、6巻まとめて購入した。もちろん一気に読みました!いい!ストーリーはまだまだ続くのだけれど、「のだめ」と合わせて楽しみが増えた。60年代の話っていうのがまたいい。いまどきの恋愛じゃない、じっくりとした王道のラブストーリー。今の子供たちはいったいどう読むのだろう。(ちなみに宝島社の「2009年 この漫画がすごい!」では、オンナ編で堂々の第1位。テレビドラマ化、あるいは映画化間違いなしだろうね。撮るのは難しいだろうけど。)

LINK
Portrait In Jazz / Bill Evans


さて、本日紹介のビル・エバンス「ポートレート・イン・ジャズ」、特にその中の「いつか王子様が」は、この「坂道のアポロン」でも重要な役割を果たしている(第2巻、P108)。主人公が、このジャケットの顔に似ている?(第2巻、P151)のも楽しい。

  Link:  Someday My Prince Will Come - Bill Evans Trio

僕にとってのこのアルバムは、いわゆるモダンジャズの楽しさを教えてくれた一枚であり、初めてジャズのレコードと自ら認識して買った一枚でもある。就職して1年目の寮生活の中、休日うろついていた近所の百貨店にあった小さなレコード屋さんで衝動買いした。その時点でジャズは、僕のリストの中に唯一残された大きな未開拓ジャンルで、あまり予備知識もなく、ただ、そのバック・トゥー・ザ・フューチャーの主人公の父親にも似た、メガネ顔のドアップ写真に魅せられてのことだった。CDと違いLPのジャケットはなかなかの迫力で、その生真面目で難しい顔のポートレートがこれから立ち向かう「JAZZ」の世界に似つかわしいような気がした。

当時ビル・エバンスは亡くなってまだ何年もたっていなかったが、今では考えられないほど注目されていなかった。巷ではまだフュージョンが全盛でエレクトリックなジャズが席巻していたし、ハービー・ハンコックや復帰後のマイルス・デイビスは、更にその先にある音楽の方向を模索していた。ビル・エバンス人気が目に見え始めるのは、CDが普及・定着し始めた後だ。

もちろん今はCDで聴いているが、当時手に入れたのはCDと同じくリマスターされた音源によるLPレコードだった。休日に寮の一室で聴いたこのアルバムは本当に衝撃的だった。何に衝撃を受けたのかというと、僕の生まれる前にこれほどまでに完成された音楽が巷にあって(1959年録音)、しかも音質も含めて全く古さを感じさせないことにだ。更にいえば、その世界を今まで知らなかったことにもである。

このアルバムがジャズ初心者の僕にとって幸いだったのは、「枯葉」や「いつか王子様が」など、メロディーを良く知っている音楽が取り上げられていて、更に「枯葉」の別テイクがいっしょに入っていたことである。本テイクの疾走感あふれる「枯葉」で十分に驚いた上に、別テイクを聴くことでインプロビゼーションの有り様を体感できた。スコット・ラファロのベースも、僕のベースの概念を完全に覆した。ドラムのポール・モチアンも含め、ビル・エバンスの生涯で最高のトリオというだけでなく、今に続くピアノトリオの基本概念をつくった一枚であることも、後から知った。

ビル・エバンスの凄さ・素晴らしさは今さら何を語る必要もないだろう。偏狭なジャズファンからは陰口をたたかれようと、フォロアーがこれだけいるピアニストは他にはいない。まさにジャズ・ジャイアントだ。

さて「坂道のアポロン」はこれからどうなるのかな。いずれにしても、いつかこの原作からビル・エバンスブーム、ジャズブームが巻き起こるに違いない。いや、既にその序章は始まっているのかもしれない。






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