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クリスマスはゴージャスな音楽で...?

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クリスマスが近づいている。
僕はクリスチャンホームで育ったので、クリスマスには特別な感慨があるし、いろいろな思い出もある。
でも最近は、教会へもトンとご無沙汰している不敬虔なクリスチャンなので、仕事にまぎれて知らぬ間に過ぎてしまっていることも多い。

とはいえ、クリスマスが近づきあわただしくなってくると、聴く音楽は少しずつクリスマス色を帯びてくる。CDの棚や引き出しには、一年の内、この時期にしか手に取らないアルバムがたくさん眠っている。

海外のミュージシャンの間では、クリスマスアルバムを発売できれば一人前、というようなところがあるらしい。レコード会社の側からいえば、一時期にしか売れないものをお金と時間をかけてつくるのだから、投資と回収の見合ったミュージシャンにしかOKを出さない、ということなのだろう。

ただし、日本のクリスマスに向けた”一時期”と海外の”一時期”は期間も物量もかなり違うようだ。以前、9月の中旬に仕事でイギリスに行ったとき、ロンドンの百貨店・ハロッズの一階では既にクリスマスの飾りつけが成され、所狭しと関連グッズが並んでいて驚いたことがある。12月に入ってから少しずつクリスマスの雰囲気になり、25日が終わると翌日には伝統的なお正月の準備に一気に向かう日本的な変わり身の早さにも驚くが、New Yearを迎えてもまだクリスマスの余韻が残っていて、この時期の物販金額が飛びぬけて大きくなる欧米の事情を考えると、クリスマスアルバムがこれだけあふれるのも分かる気がする。

ということで、今日紹介のアルバムは、ここ2,3年よく聴いた僕のクリスマスの定番。Till Brönnerの「The Christmas Album」だ。

The Christmas Album / Till Brönner
The Christmas Album / Till Brönner


ティル・ブレナーはドイツ人で、ようやく日本でも知られるようになってきたジャズ・トランペッターだ。硬派のジャズ好きおやじには、そっぽをむかれそうだが、最近、新譜が出れば気になるトランペッターが5人いる。クリス・ボッティ(アメリカ)、ファブリツィオ・ボッソ(イタリア)、ユッカ・エスコラ(フィンランド)、ロイ・ハーグローブ(アメリカ)、そしてこのティル・ブレナー(ドイツ)だ。今風に言えばスムースジャズや、一部ヒップホップジャズに分類されることもある人たちなのだが、その実力といい、スター性といい、また根っこの部分にある実力に裏打ちされた音楽性といい、申しぶんなく、少し沈滞気味のジャズの未来を形作る人たちなのだと思う。トランペット界が華やかなのは、こうしたスター性を持った人たちがたくさん出るからなのだろう。

このアルバムを入手したときは、彼のアルバムとしては2枚目で、いったいどの程度の人か判らなかったが、ただただその内容の豪華さに驚き、彼の本国での人気の程を垣間見た気がした。

入手したのは欧州盤だが、まず通常盤のCDなのにケース自体に「Till Brönner / The Christmas Album」の金文字が刻み込まれている。いやー、お金かかってます。

アルバムはティルのソロ、「We Wish You A Merry Christmas」 で始まり、彼の持ち味である、少しBreathyなトランペットを披露する。ワンフレーズ終わったところで、グロッケンシュピールとハープによるジングルが遠くからなり始め、クリスマスの始まりを高らかに告げる「Joy to the world/ もろびとこぞりて」の大オーケストラサウンドへ。なんと、フィーチャリング・(ベルリン)ドイツ交響楽団で、それはまるでディズニーのファンタジー映画のオープニングのように壮大でわくわくさせる幕開けだ。ホント、お金かかってます。

ティル自身もチェット・ベイカーばりに何曲か歌っているのだが、それはさておき、ゲスト陣がすごい。ニューヨーク・ヴォイセズ、フランク・マッコム、イヴォンヌ・カッターフェルド、クリス・ボッティ、ドミニク・ミラー、キム・サンダース、ドン・グルーシン等々、それはそれは豪華だ。特にクリス・ボッティとの夢の競演「Notes On Snow」ではティル自身の作曲センスを見せつけ、ミュートをティルが、オープンをクリスが担当、2本のトランペットの音色差を明確にした上で、二人の個性をこよりのように絡み合わせながら、静かな大人の音楽に仕上げている。これまた、お金かかってます。

個人的に驚いたのは、以前よく仕事でお世話になったドン(グルーシン)さんが「Better Than Christmas」という楽曲を提供し、「Nature Boy」ではピアノ・ソロをフィーチャーされていた事だ。こんなところで拝聴できるなんて意外だった。国際色豊かで多くの人に慕われるドンさんの人柄を感じさせてくれるティルのコメントもライナーノーツに載っていて、少しうれしかった。お元気なのだろうか。

豪華だったアルバムも、終りに向かって少し寂しさや切なさを感じさせる楽曲に傾いてくる。最後の曲は「Auld Lang Syne」、誰もが知っている「蛍の光」だ。この曲をドイツ交響楽団をバックに、ティルは静かに静かに吹く。「宴のあと」は必ずやって来る。その寂しさの後ろに、来年に向けた希望と情熱を秘めて、静寂の中、アルバムは終わる。

クリスマスをめぐる大万華鏡のようなこのアルバムは、ゴージャスでありながら本当に品良く仕上がっている。それは彼のスタイリッシュな音楽センスそのものであり、ジャズトランペット界の今後にますます期待を持たせてくれる。クリスマスまで、あと何回聴けるだろうか...終わってしまっても、一年間お蔵入りさせるのがもったいない、そんな一枚である。



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