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フィンランドへの思い

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フィンランドを訪ねてみたい。時々そんなことを思う。北欧の地に未だ足を踏み入れていないことが原因かもしれないが、それがノルウェイやスウェーデンではなく「フィンランド」なのは、恐らくシベリウスの故国を感じてみたいという思いが、僕の心の何処かに隠れているからだろう。

フィンランドの作曲家、ヤン・シベリウスのオーケストラ作品に、「悲しきワルツ」という小品がある。この曲は1904年に初演されているが、その前年に上演された「クオレマ」(フィンランド語で『死』を意味する)という戯曲の第一幕の音楽を自ら改訂したものだ。

僕はこの曲がとても好きで、しんしんと冷え込む今の時期、静かな空間でひとり考え事をしているような時、ふと我に返るとジンジンとした胸の奥の方に、その冒頭のなんとも切ない伴奏の音形が聞こえてきたりする。

  Link:  悲しきワルツ/ シベリウス / アシュケナージ指揮、ヨーロッパ室内

コントラバスのピッツィカートで始まり、「ブン・ターラ、ブン・ターラ」というワルツの伴奏。その上にゆったりとした弦のメロディーが乗ってくる。その納まりのつかない不安定な音形が、行き場のない寂しさや悲しみを感じさせるようで切なく響く。曲の方は、一瞬納まったり、また不安定になったり、急に快活になったりしながら、波に揺られるように変化しつつ進行していくが、最後は静かにバイオリンの悲しい和音で終結する。

その音楽から生み出される悲しみの余韻は、何故か甘い。思えば、悲しみというものは、絶望に至らない限り、いつか甘美な余韻を連れてきてくれるものなのだろう。


シベリウスの音楽は交響曲も含め、北欧の風土を強く感じさせてくれるようで僕は大好きなのだが、その中でも、アマチュアのオーケストラで演奏経験のある者にとっては、恐らく最も馴染み深いであろう交響詩「フィンランディア」にも特別な思いがある。

  Link:  フィンランディア/ シベリウス/ ヘルシンキ・フィル

僕も何度か演奏したとてもポピュラーな曲だが、合唱つきで演奏されることもある中間の賛歌の部分は、第2のフィンランド国歌とも呼ばれ更に有名だ。中学生か高校生の頃、祖国の自然を賛美する歌詞で合唱した記憶もある。しかし僕にとってはこの部分は、賛美歌298番「やすかれ、わがこころよ」として定着している。

僕はとっても不敬虔だが一応クリスチャンであり、この賛美歌298番を昔から愛唱歌ということにしていたので、僕たちの結婚式の中でも参列者に歌っていただいた。恐らく僕のお葬式でも(あればですが)、同じように歌っていただくことになる特別な曲なのだ。


そんなフィンランド、行くとすればやはり首都の港町、ヘルシンキだろうか。そういえば、お正月の3日早朝、僕が大好きだったNHKの番組、「世界ふれあい街歩き」のアンコール放送をやっていた。この番組は、世界の街のなんでもない通りを、ただただ歩いたり寄り道したりするカメラ映像に、あたかも本人が散歩をしているかのように、上から俳優さんや女優さんの声をかぶせただけの番組だが、なんとも自分が海外に行って、一人街を歩いているような幸せな気分になれる番組だった。その日はルクセンブルクの旧市街だったが、それを見ながら、あー、ヘルシンキを散歩したい、と心底思ってしまったのだ。

そんなヘルシンキの街や人を映し出した映画が、この日本で生まれた時には、本当に驚いたものだ。群ようこ原作、荻上直子監督の2006年の作品、「かもめ食堂」である。

  Link:  かもめ食堂 予告篇

小林聡美、片桐はいり、もたいまさこのトリプル主演と聞いて、その数年前に録画してみたテレビドラマ「すいか」を思い出し、なるほど、この3人がどこかで食堂をやるコメディーってところかなと、その映画の雰囲気まで想像できるような気がしたが、その舞台がフィンランドのヘルシンキだ、というところでぶったまげてしまった。なんでまた・・・と思ってしまうと止まらない。早速原作本を購入して読み、それから随分後になってDVDか何かで映画も観た。作品としては期待を裏切らなかったし、ヘルシンキの設定もそれなりに納得した。調理の場面もとても丁寧に撮られていて、なんとも「ほんわか」するとともに、やはり行ってみたい、という思いになったものである。

さて、このかもめ食堂、撮影で使用したカフェが、かもめ食堂(Kahvila Suomi)として今でも営業されているらしい。行きたいという思いだけでつかみどころのなかったヘルシンキの街に、なんとも単純なようだけど目標ができたようで、うれしかった。

ところで、ヘルシンキは案外日本と近くて、成田から10時間とのこと。フィンランドは日本に一番近いEU加盟国だと聞いてびっくりしたが、少しはハードルが下がった気がする。ハードルだけ下がっても飛ばなきゃいつまでも行けないわけなんだけど...さて、北欧の地を踏めるのはいつのことやら、です。


*** シベリウスのオーケストラ小品は、僕の愛聴盤のベルグルンド盤でぜひどうぞ

シベリウス管弦楽曲集 / ベルグルンド指揮、ボーンマス交響楽団
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かもめ食堂[Blu-ray]
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かもめ食堂 (幻冬舎文庫) / 群ようこ
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