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「戦メリ」はクリスマスソングなのか?

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数年前、愛媛の実家に帰っていた時のこと、何かの流れからおふくろと昔話をしていて、僕の学生時代の思い出の品を詰め込んだダンボール箱が、一つ無くなってしまったことが非常に残念だった、という話になった。その時おふくろが、「あ、そうそう...」という感じで、親父の部屋の押入れを整理していたら僕からの送り状を貼った段ボール箱がひとつ出てきた、と言い始めた。親父が亡くなって数年が経過し、おふくろもようやく一人でいることに慣れ、親父の荷物も整理できるようになったと聞いた後だった。

僕は驚きの声をあげ、はやる気持ちを抑えきれず、すぐにその箱を見せてもらった。それはまさしく遡ること二十数年前、僕が実家に送り返した段ボール箱だった。上面に、「捨てるな!」と大きく書いてあって、ガムテープもその時封をしたままの状態。恐らく「捨てるな!」の文字に反応した親父が、保管しておいてくれたのだろう。


大学卒業時、寝具袋一つと段ボール箱を十数個、実家に送り返した。アパートは大学院に行く友人が引き継いで借りることになっていたので、家財道具は全て譲り渡し、送り返したのは寝具袋に詰め込んだ布団と衣類、それとLPレコード、カセットテープ、本の類だけだった。

アパートを引き払う前日はオーケストラの演奏会に出演したのでバタバタだったが、実家に帰って数日で就職のため大阪に向かわなければならず、恐らく荷物を解いている暇は無いだろうと判断し、段ボール箱は最低限の仕分けをして送った。そのまま大阪に送るものを数箱にまとめ、本は単行本と文庫本に分類、これが荷物の大半だった。最後に一箱だけ、出演したオーケストラのパンフレットや手紙類、ちょっとわけありの小物など、すぐにいらないけど捨てられないものを一箱にまとめて、箱の上にマジックで「捨てるな!」と書いた。予想通り、大阪に発つまでに荷物を整理する時間は無く、入社の準備をするのに精一杯で、荷物は実家の敷地内に建てられていた木造の物置に放り込んだままになっていた。

その後、結婚もして落ち着いた頃、ようやく学生時代の荷物を整理しようという気になったのだが、その時点で既に卒業から5年経っていた。帰省した夏、物置からダンボール箱を引っ張り出して片っ端から開けていったのだが、安普請の物置で湿気も多く、特に床近くに重ねてあった文庫本の箱は、湿気と隙間から入り込んだ虫にやられて、そのまま廃棄せざるを得なくなっていた。目に付いた全ての荷物を整理し終えたとき、例の「捨てるな!」の箱が無いことに気付いた。押入れの中も探したが見つからず、おふくろに聞いても知らないという。物置は僕が知っている頃に比べて置かれているものがずいぶん変わっていたので、恐らく捨てられてしまったのだろうと思った。大学時代の思い出がすっぽりと無くなってしまったようで、残念で仕方なかったが、もう卒業からずいぶん時間が経ち、既に新しい生活の中にあったので、すんなり諦められた。それ以降、ほとんど思い出すこともなく、20年近く経過していたのだった。


そういう経緯を辿った荷物であり、内容はとても語りつくせないのだが、その中に何故か一冊雑誌が入っていた。松文社のアミューズメント・マガジン、「GOUT(グゥ)」という季刊誌の創刊号だ。発行日を見れば1983年6月30日。大学4年の時である。雑誌の類はほとんど捨てたつもりだったが、どうもこれだけは残しておいたようだ。そう思いながら中を見るとその理由は明白だった。その発売の1ヵ月前に公開され大きく話題になっていた大島渚監督の作品、「戦場のメリークリスマス」の特集がその大半を占めていて、しかもその内容のレベルが、ただの雑誌の域を超えた半端なくハイレベルなものだったのだ。

図1-121224

監督はもちろん、出演したデビッド・ボウイ、ビート・たけし、坂本龍一それぞれへの趣向を凝らした長いインタビューと、多才なゲストを含めた対談。そこに日比野克彦をはじめ今ではとても考えられない布陣のイラストレーターたちが、ポップアートの展覧会の如きアートワークを施していて、思わず鼻息が荒くなるような雑誌だった。(その後、続いたのかどうかは知りません。ただ、恐らく予算面で...)

思えば、僕の学生時代の最終年は、「戦メリ」だらけだった。なんともシリアスな戦争映画でありながら、その基調にアブノーマルな精神世界を垣間見るこの作品は、問題作「愛の亡霊」以来5年ぶりの大島渚監督作品であったことや、カンヌのグランプリを獲る獲ると言われながら逃してしまったことにももちろん注目が集まったが、何と言ってもキャストの意外性が話題の中心だった。そしてもう一つの注目点は、意外なキャストの筆頭だった坂本龍一の担当した音楽にあった。その音楽の秀逸さは誰もが認めるところだろうが、今考えればそれはイエロー・マジック・オーケストラで幕を開け、そこから世界のサカモトへと駆け上るための、重要な上り階段だったのだ。

正直言うと、当時僕はYMOの音楽にどうもピンと来ていなかったし、坂本龍一に対しても似たようなものだった。「戦メリ」の音楽に関しては、なんとなくいい印象を持ってはいたが、他の話題が大きすぎて、音楽をじっくり聴いてみようなんて気分にはならなかった。

そうやってしばらくは僕も静観していたのだが、その年の12月、坂本龍一が4枚目のソロアルバム「コーダ」を出すに至って、初めて触手が伸びた。このアルバムは、「戦場のメリークリスマス」のサントラを坂本自身がピアノ演奏したカセットブック「Avec Piano」をアルバム化したものであり、僕が学生時代、最後に購入したLP盤である。

Coda / Ryuichi Sakamoto
Coda / Ryuichi Sakamoto


僕は、そこに展開される音楽を聴いて、初めて坂本龍一の凄さを知った。その時点では「戦メリ」のサントラ盤を聴いていなかったこともあって、そのアルバムをピアノの小品集のように受け取った。それはまるでムソルグスキーの「展覧会の絵」のピアノ版を想起させるような感覚であり、劇的に展開していく音楽を、ただわくわくしながら聴き進んだものだ。それにしても冒頭の”Merry Christmas Mr.Lawrence”の存在感たるや...やはり名曲である。しかも最近の坂本龍一の感情の入りこんだ演奏とは違って、なんだかすごく好感の持てるカッチリとした演奏になっていて、僕はこれくらいクールな方が好きだ。

  Link:  Merry Christmas Mr. Lawrence(Piano Version 1983)/ Ryuichi Sakamoto

ところで、この曲をクリスマスソング、なんて思っている人はいるのだろうか。僕には全くそのイメージがなかったので、当初この曲をこの時期に紹介することにかなり違和感があったのだが、それは後年CDで購入した「戦場のメリークリスマス」のサントラ盤のイメージが強かったからだろう。映画「戦場のメリークリスマス」は南国の島での話であり、映画の公開時期も暑い時期に重なっていたので、僕にとってはそのタイトルとは真逆ののイメージが強かったのだ。

戦場のメリー・クリスマス OST / 坂本龍一
戦場のメリー・クリスマス OST / 坂本龍一


  Link:  Merry Christmas Mr.Lawrence (Original Version 1983) / Ryuichi Sakamoto

ところで、この”Merry Christmas Mr.Lawrence”は、もう一つのタイトルを持っている。”Forbidden Colours (禁じられた色彩)”がそのタイトルであり、海外でこの曲を演奏する時は、しばしばこのタイトルが使われるのだが、これは坂本龍一と親交の深かった英国のロックグループ、Japanのボーカルだった、デビッド・シルビアンが詩をつけ、サントラ盤のラストも飾っているボーカル・バージョンである。

  Link:  Forbidden Colours / Sakamoto Ryuichi & David Sylvian

このバージョンは、Ryuichi Sakamoto & David Sylvian名でシングル化もされたが、その詩は三島由紀夫の「禁色」に触発されたものであり、その声とあわせて独特の深い世界を築きあげている。

一方で、David Sylvian自身の1987年のアルバム「Secrets of the Beehive」のUK盤にもこの曲は入っていて、そこでは編曲が変わり、よりDavid Sylvian的になっているのだから面白い。僕はこのバージョンを結構好きなのだ。

Secrets of the Beehive / David Sylvian
Secrets of the Beehive / David Sylvian


  Link:  Forbidden Colours (Another Version) / Sakamoto Ryuichi & David Sylvian

さて、ここまでくると、この曲のどこをどうひっくり返してもクリスマスの匂いは漏れてこないが、ここで最初の「CODA」における”Merry Christmas Mr.Lawrence”に戻って冒頭のピアノの演奏を聴いてみると、なんとも静かな中に舞い落ちる雪をイメージし始め、タイトルと案外フィットしているのかもしれないな、なんて思ってしまうのだから不思議である。う~ん、ピアノバージョンはこの時期の音楽でいいのかもね。

ところで「Coda」とは、音楽用語で終結部分。そのタイトルは、長らくつき合わされた「戦メリ」はもうこれで終りだ、という坂本龍一の思いが込められいるらしい。ということで、このお話もそろそろCodaへ...


<おまけ>

近年の坂本龍一の演奏もぜひどうぞ。

  Link:  Merry Christmas,Mr Lawrence / Ryuichi Sakamoto
      こういうエモーショナルなのがいい場合も時にありますね。

  Link:  Merry Christmas Mr. Lawrence / Utada
      ついでに(と言ったら怒られるな)Utadaバージョンを



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