Jerrio's Music Cafe

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つゆのあとさき

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そろそろここ近畿でも梅雨明け宣言が出るのだろうか。昨日まではなんだかはっきりしない感じだったし、出かける時は必ず傘を持って出て、ああ、やっぱりまだ梅雨なんだ、と納得するような天気だった。でも、今朝の天気図を見る限りは、いよいよ梅雨明けかな。

昨日気象庁は「中国地方と四国地方が梅雨明けしたとみられる」などという歯切れの悪い発表をしていたけど、どうもこれが梅雨明け宣言の常套句のようだ。この微妙にあざとい表現を聞きながら、「宣言」なんやからCMの「赤ちゃんやめました!」のように、スッパリと「梅雨が明けました!」と何で言えへんかなー、と一人憤慨していたわけだけど、まあ、どこにも大人の事情というものがあるようで...

はっきりしない天候のなかで、世間を騒がしているニュースもはっきりしないものが多い。集団的自衛権も、マレーシア航空の遭難も、イスラエルのパレスチナ自治区侵攻も...そんな中で、昨日ほっと胸をなでおろした岡山の小学生監禁事件、何とか解決して欲しいとずっと願っていたので、無事保護の速報が入った時は他人事とは思えず、「ホント、よかったね~」と親戚のおじさんのような心境になった。でもこれにしても、犯人の心の闇は、はっきりしないまま忘れ去られていくのだろうか。根っこの部分に同じ病巣がはびこっているような事件が後を絶たない中で、その構造をはっきりさせなきゃ、といつも思ってしまうんだけど...


昨日はそんな梅雨の休日、ちょっと思い立って本棚の片隅にある岩波文庫版、永井荷風の「つゆのあとさき」を手にとり、しばらくぱらぱらとながめていた。内容は全く忘れていたけど、タイトルに吸い寄せられて、つい手にとったのだ。

「つゆのあとさき」は銀座のカフェ(作中は、カッフェーなのですが)の女給・君江と彼女をとりまく男客たちの三面ゴシップ的な内容で、タイトルと結びつくようなものは特に無い。ページをめくりながら、これもまたその由来がはっきりしない小説やったなー、と思い出したわけだけど、実はこのタイトル、単に梅雨時に書いた小説なので、そんなタイトルにしてみました!という、何ともいいかげんな命名だったようだ。

ちょっとした肩透かしだったが、僕はこの時代の作品を、こんな風にちょいと取り出してぱらぽらと読むことがある。内容はともかく、その中の丁寧なやりとりや、今とは微妙に違う日本語の言い回しがちょっと面白くて、読んでいると何故かホッとするのだ。小説の構造も、ひょっとしたら今のものよりうんと凝っていて、それだけで楽しめたりもする。そのわりに、タイトルはええかげん。そのへんのバランスがいいのかもしれないけどね。


さて今日の音楽。昨日の夕方、窓の外に雨の音を感じながら聴いた一枚。ジャズ・シンガー、リズ・ライトの2003年のデビューアルバム「Salt」にしよう。

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Salt / Lizz Wright

当時僕はこのアルバムで、一気にリズ・ライトのファンになった。スッと背筋が伸びるストレートでスムースな声なのに、その裏に悲しみと強さを感じさせる。デビュー盤にして、20歳そこそこのシンガーとは思えない説得力と完成度。カバーだけでなく、自ら作った楽曲もすばらしく、将来性を強く感じさせるアルバムだった。プロデュースにはトミー・リピューマだけでなく、なんとドラマーのブライアン・ブレイドが名を連ねていたんだな。今気づいたけど。

アルバムは、チックコリアの名曲"Open Your Eyes, You Can Fly"で始まる。これがいい。フローラ・プリムを飛び越え、一気にリズの世界に引き込まれてしまう。

  Link:  Open Your Eyes, You Can Fly / Lizz Wright

2曲目のタイトル曲"Salt"は、彼女自身が作詞作曲したものだ。ジャズと言うよりもソウル。ブラスをバックにしたソウルフィーリング溢れる音楽は、実は彼女の目指すものなのかもしれない。

  Link:  Salt / Lizz Wright(live 2003 Newport)

4曲目の"Soon as I Get Home"や、彼女自身の手による10曲目の"Blue Rose"などを聴いていると、歌も楽曲もその完成度の高さに今更ながら驚かされる。

  Link:  Soon As I Get Home / Lizz Wright
  Link:  Blue Rose / Lizz Wright

実は彼女は、このデビュー・アルバムの前に、ジョー・サンプルに才能を見出され、彼のアルバム「ザ・ピーカン・トゥリー」で2曲歌っている。衆目を集めたのは、それが最初だ。その中の一曲、"No One But Myself To Blame"を聴けば、確かにレイラ・ハザウェイともどこか重なって、ジョー・サンプルの好みそうな声とフィーリングだったんだと、あらためて思う。

  Link:  No One But Myself To Blame / Joe Sample feat. Lizz Wright

将来を嘱望されたリズは、ファーストアルバム以降も順調にアルバムを発表していったが、実は2作目以降、少し印象が変わった。よりルーツ音楽に向かう中で、ジャズの感触が後退して行ったのだ。それはそれで時代の流れだったわけだけど、僕自身は少し残念だったかな。

そんなことをつらつら思いながら、「Salt」のジャケットを手に、ふと裏ジャケットを見て思い出した。このアルバムが雨の印象と重なる理由。もちろん彼女の音楽の醸し出す雰囲気も一因だが、この裏ジャケットの写真からくるものも大きかった気がする。今まで忘れていたんだけど。

当時僕はこの写真を見るたびに、何故か「となりのトトロ」の映画ポスターが思い浮かんだ。降りしきる雨の中、傘をさす女の子(に見えたのです)。その横にボストンバックじゃなくてトトロが立っていれば、面白いのに、なんてつい思ってしまって...そのたびに、頭の中にトトロの音楽が鳴り響くんだもんなー。(台無しです。)

20140721

さて、外は梅雨なんてどこ吹く風で太陽がジリジリ照り付けている。この分だと今日は絶対梅雨明けやね。微妙な言い方なんかじゃなくて、「近畿地方に梅雨明け宣言しま~す!誰が何と言おうと、絶対しま~す!パッパラパパパパー!」と、ファーレでも鳴らしてくれればいいのに...あー。あつい。



<おまけ>
 ジョー・サンプルの「ザ・ピーカン・トゥリー」も、ぜひ。

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Pecan Tree / Joe Sample

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